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『認知症フレンドリー社会』 (岩波新書)

小学生と同じくらいの人が。。。あ、そうか、特別ではないんだなぁ。

徳田 雄人 『認知症フレンドリー社会』  岩波新書 2018

2018年現在、日本では認知症の人が約500万人と推定される。高齢者の7人に1人が認知症。小学生が約650万人なので、大きくは変わらない人数でもある。
認知症の人がこれだけ居るという実感がないのは、見た目でわからなく、また認知症の人が地域や社会との接点が少ないためかもしれない。

本書は、この数字を踏まえ、だれもが認知症の当事者になりうることから(避けようと思って避けることができるものでもない)、誰もが認知症になる可能性を踏まえた上で、その備えをした社会を考察する。

その社会のキーワードとなるのが「認知症フレンドリー」。
認知症対策が最も進んでいる英国で2012年から進められた認知症フレンドリーコミュニティの支援を参考にし、社会や地域を再設計するという取り組みでもある。認知症患者の隔離や保護ではなく、通常の環境のなかで
「認知症の人が高い意欲を持ち、自信を感じ、意味があると思える活動に貢献、参加できるとわかっている、そうした環境」
を目指している。

認知症の人が安心して生活できるまちとはどういうものか

英国の事例、日本(大牟田市、町田市など)の事例などを後半で具体的に紹介することで、認知症フレンドリー社会の実例も知ることができる。

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tag : 認知症フレンドリー社会

『GHQ ゴー・ホーム・クイックリー』(文藝春秋)

法制局の官僚であった佐藤達夫を主人公に、GHQの思惑から強引に進められる日本国憲法の成立までを描く憲法成立前夜小説。

中路 啓太 『GHQ ゴー・ホーム・クイックリー』 文藝春秋。2018

敗戦後、日本では幣原内閣の下、松本国務大臣などを中心に大日本国帝国憲法の改正草案作りが進められていた。
しかし、GHQは改正草案を拒否し、代わりに彼らが作った憲法案を日本側へ渡した上で、この案を元に早急に憲法制定を行うように指示した。
法制局員の佐藤は、実質的にこの憲法案の日本語訳を時間が限られた中で中心に行いながら考える。
法律に関して素人であり、文面も今までの法文とはまったく異なるこの憲法をどのように法律としての体を整えられるか苦吟する。
そんな彼に時の外相、吉田は言う。

「GHQとは何の略だか知っているかね。。。ゴー・ホーム・クイックリーだ。「さっさと帰れ」だよ」
「総司令部が満足する憲法を早急に作っちまおうじゃないか。彼らにはさっさとアメリカに帰ってもらう。じっくりと時間をかけて良き国の体制を整えるのは、独立を回復してからだ」

本書はあくまでも小説ではあるが、佐藤自身の憲法成立に関する著作や関係者の回想録、議事録、公文書等を参考にしたものでもある。
GHQ(アメリカ)が当時日本に対して影響を持とうとしていた極東委員会の力を抑えるためにも、憲法制定は直ぐに行うことが必要であり、極東委員会を抑えるためにいくつかの条項は譲れないものであった。
そうした中で、一方では先の吉田の発言にあるような「独立を回復してから変えられる含み」を持たせつつ、いかに法上の整合性などをとりかつ日本に受け入れられるものとするか政府議会が苦心する様子が佐藤の目をとおして書かれる。

読み終わり、だからといって今の日本の改憲論争が良いとも思えなかったのは。。。
結局成立の時と同じく、多くの意見を踏まえながら、きちんと議論していこうという姿勢が見られない(あるいは成立の時よりももっと異論がないのかもしれない。。)ように感じられるからだろうか。

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『嗅覚はどう進化してきたか』(岩波書店)

私たちはなぜある匂いに快・不快を感じるのか。人間以外はどのように匂いの世界を生きているのか。
科学をわかりやすく伝える(と個人的に勝手に思っている)岩波科学ライブラリーの一冊。

新村 芳人『嗅覚はどう進化してきたか 生き物たちの匂い世界』 。岩波書店。2018

第1章 魅惑の香り
キリストの誕生の際、三博士の贈り物の中に香料があった。
そんな話から始まる本書では、まずこれらの香料(乳香、没薬)の歴史をたどり、エジプトなどでミイラを作る際に使われた歴史や、精油技術の発達を述べる。
その後、麝香に話が移り、動物由来の香料の少なさ(4種類のみ)と、その採取の難しさなどが書かれる。

第2章 匂いをもつ分子
1章で人々の生活に昔から香りが関わっていたことを受け、本章では匂いとは何かが書かれる。
特定の分子によってひき起こされる感覚である匂い。分子によってひき起こされるために、分子構造により匂いがある程度決まってくるが、その関係は複雑である。

第3章 匂いを感じるしくみ
匂いの知覚はどのように行われるか。鼻の奥にある嗅覚受容体と匂い分子の対応関係は多対多であり、匂い分子の組み合わせを脳が知ることで匂いが感じられる。人間は嗅覚受容体を400種以上持っているが、これは他の感覚(視角4種、温度9種、味覚約30種)と比べかなり多い。これは、匂いには光の原色のような、基本となる単純な匂いがないためだと考えられる。
そして、匂いの快・不快は絶対的なものではなく、遺伝的要因と環境的要因によって決まる。

第4章 生き物たちの匂い世界
人間以外の匂い世界はどのようになっているか。これがおぼろげながらわかるようになったのは、遺伝子が解析されるようになったためである。それぞれの動物の嗅覚受容体遺伝子を調べることで、匂いをどの程度分別できるかがわかり、さらに実際の生き物を使った嗅ぎ分け実験などで動物の匂い世界が研究されている。

第5章 遺伝子とゲノムの進化

第6章 鼻の良いサル、鼻の悪いサル
人間は他のサルと比べても嗅覚が劣っているわけではない。そこには人の食性が関係しているかもしれない。

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『技術者倫理』(実教出版)

技術者として世界で活躍するには、語学力・技術力は当然のこと(として本書では触れられず)、他国・異文化に対する理解とコミュニケーション力である。
そんな異文化理解の方法を、実例とともにどのように学んでいくのがよいかを示すのが本書。

藤本義彦,、木原滋哉、天内和人(編)『技術者倫理 グローバル社会で活躍するための異文化理解』。実教出版。2018

講義テキストとして使用されることを考えており、約30の細かい章にわかれている。

大きく次の4つの分野について書かれる。
・異文化理解とコミュニケーション力(第1部)
 コミュニケーションについては、ケーススタディ的な学習方法も紹介しながら、理論だけでなくより実践的な理解について書かれる。

・世界の歴史的文化的背景の理解(第2部)
 実際に異文化の人々と働く人々の感想も織り込みながら、地域別の歴史文化、社会の特色がまとめられる。

・グローバルエンジニアの職業意識、倫理、法知識(第3部)
 文化の違いのなかで、どのように消費者の意識を捉え、また法律などに即していくかが安全や知的財産などについか書かれる。

・グローバル社会に関する知識、理解、課題解決能力(第4部)
 広く、現代社会が書ける問題(経済、環境、人権、ジェンダー、戦争など)について触れられる。

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tag : 技術者倫理

『司馬江漢』(集英社新書)

江戸時代、市井に生きた画家であり科学者であった司馬江漢の生涯を追う。
銅版画や地動説を日本で初期に取り入れ、地動説ではさらに深い宇宙論まで考察していたが、彼は素人学者として当時の日本の学者たちに受け入れられず、また自身の口の悪さも災いし、世間から忘れられていった。。。

池内了 『司馬江漢 「江戸のダ・ヴィンチ」の型破り人生』。集英社新書。2018

司馬江漢。あまり名前は知られていないが彼は江戸時代に様々な分野で活躍した。

画家として。。。
浮世絵だけでなく南画(中国の絵画)を学び一流の絵師として活躍し、銅版画の技法を日本で初めて取り入れ世間に広めた。
さらに西洋画の手法を日本で初めて確立した。遠近法を取り入れたのも彼である。

科学者として。。。
日本において最初に地動説を広め、さらに宇宙論にまで考えが及んでいた。得意の絵を用いて、地動説や宇宙の姿を人々に紹介したのも彼の功績とも言える。

文筆家として。。。
絵の修行のために長崎に1年かけて渡った様子を日記とし(『江漢西遊日記』)、あるいは前述のように科学を人々に紹介するための本を出版した。

しかし、先駆過ぎたのかあるいは彼の人柄か、歴史に残ることはなくいつしかその名は消えていく。
そんな彼の生涯と功績を集めなおしまとめたのが本書。

1、2章では絵師としての江漢を書く。ここでは江漢に大きな影響を与えた師とも言える(が、批判的にも捉えていた)平賀源内との関わりも書かれる。
3章では、江漢の旅行記についてその内容を「日記」としての魅力から描いていく。日記のなかでも、彼が西洋について並々ならぬ関心と知識を持って貪欲に吸収・実践していたことがわかる。そんな彼の西洋文明の世間への紹介の様子が4章で書かれ、地動説の部分が5章で書かれる。
しかし、彼の性格(功績を独り占めし、技術をオープンにしない。また頑固でもある)や口の悪さから、学者仲間かや公的な機関からは疎んじられていく。そんな他の学者との関わりと孤独が6章で示される。
晩年になり、引退と復帰を繰り返す晩年が7章で紹介される。

多くの知識と技術を持ち魅力的ではあるが友人にはしたくない、そんな司馬江漢のすごさと哀しさ、しかし、周りが感じるようなそんな哀しさを少し超えているような境地を感じられる一冊

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tag : 『司馬江漢』(集英社新書)

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