『シャハト』(三恵社)

ヤルマール・シャハト(1877-1970)は、第一次世界大戦後~戦後のドイツ経済において、テクノクラートとしてドイツ経済を導いてきた。
彼の政策は、ナチ政権(ヒトラー)を支えるものでもあり、また同時にヒトラーの軍拡路線を抑えようとするものでもあった。
本書はシャハトが経済人や政治家というより、テクノクラートとして実用的に困難な経済状況に立ちむかった人物であること、しかしまた、非常に個性的な人物でもあったことを検証していく。

川瀬泰史 『シャハト ナチスドイツのテクノクラートの経済政策とその構想』。三恵社。2017


貧しい環境で育ったシャハトは、野心を持ち、また強い自意識を持つようになったと思われる。
第二帝政期は民間銀行で勤勉な仕事ぶりから出世し、ワイマール期においてライヒスバンク総裁となり、ドイツのハイパーインフレをレンテンマルク政策により抑えた。加工貿易立国を目指しそのために植民地が必要という考えを持っていた彼は、1931年にヒトラーと接触し、ナチ政権下で経済大臣となりながら、拡大する軍事支出の財源としてメフォ手形を成立させた。
しかし、ヒトラーの対ソ戦争などの拡大主義に対して、軍拡反対の立場をとり、経済政策も軍拡ができないように制約をかけていったが、これによりヒトラーの反感をかい、第二次大戦末期には逮捕・収容所生活を送っている。
第二次大戦後は、戦犯指定されたが裁判により無罪となった。のち民間銀行を設立した。

本書では、主にシャハトの経済政策(「新計画」、インフレ収束政策、メフォ手形、またそれら全体をみての金融政策)を概観し、インフレ収束やナチ政権下での民間銀行制度維持には成果をおさめたものの、新計画・メフォ手形は軍需拡大による影響を抑えられず失敗したことが示される。
著者はこれらの政策に、本来シャハト自身がもっていた経済的な考えにこだわらず、実務的に目的にあわせて行動するプラグマティスとである姿と、テクノクラートであるところにシャハトを見る。

また、本書ではシャハトのユダヤ人保護政策への一定の貢献と限界、ヒトラーとの対立を追いながら、ヒトラー政権下においても「正常化」を求めたところにシャハトの本質を探る。
関連記事

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : シャハト ナチスドイツのテクノクラートの経済政策とその構想

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

ホンの本好き

Author:ホンの本好き
読んだ本からオススメの本を、半分備忘録的に記録します~

最新記事
カテゴリ
最新コメント
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる