『ナチスの「手口」と緊急事態条項』(集英社文庫)

自民党改憲勢力が狙う「緊急事態条項」により何が可能となるのかを、同様の条項をもっていたワイマール憲法とナチ独裁の成立から考察し警鐘を鳴らす。

長谷部恭男、石田勇治 『ナチスの「手口」と緊急事態条項』。集英社文庫。2017

憲法学の研究者とドイツ近現代史の研究者の対談により、ナチ独裁成立が決して民主的なものではなく、しかし、それを可能としたのがワイマール憲法にあった大統領の緊急措置権(=これが自民党の考える緊急事態条項に近いもの)であったことを示す(1章)。

・民衆の全てがヒトラー政権を支持していたわけではない
・本来、大統領の緊急措置権は議会が廃止を要求できるものであり、大統領と議会の力の均衡が考慮されていた
・大統領の緊急措置権=委任独裁が、暴力を背景に緊急措置権の範囲を定めない制限なき緊急権であったため、主権独裁=委任独裁を定めた憲法を破壊しえた
・「合法革命」のプロパガンダのもとに授権法=全権委任法により、ヒトラー政権が憲法改正を行っていった
これらから、緊急事態条項に該当する緊急措置権の問題が示される。

2章では、ヒトラー政権を支えた世論について考察。議会制民主主義が「決められない」政治となる中で、第一次世界大戦後のドイツを否定したい層、経済不安により生活が脅かされた層、現状を打破したい若い知識層などが政権を支持していった。

3章では、戦後ドイツが1章の歴史を踏まえ、どのように主権独裁の復活を防止するように歯止めをかけていったかを見る。
冷戦下で復活した緊急事態条項に対しては、その範囲に厳格な制限をかけ、また憲法そのものに変更をできないようにした。

4章では、自民党の考える緊急事態条項の危うさを考える。そこには各国の法・状況を恣意的に解釈した理屈のもとに、緩い発動条件と制限のなさからの主権独裁への危険性がある。
自民党が理屈とするような必要性については、憲法に緊急事態条項を作る必要はなく、現行の憲法及び法律で対応可能である。もしどうしてもつくるなら、範囲や発動条件を明確にし、司法が統治行為論を放棄する必要がある。

5章ではドイツの戦後の動きを俯瞰し、いかに過去にむきあったかを示す。


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