『見えない産業 酸素が支えた日本の工業化』(名古屋大学出版会)

酸素製造業・メーカーの黎明期から現在までを追う学術書。

沢井実『見えない産業 酸素が支えた日本の工業化』。名古屋大学出版会。2017


第1章
酸素の製造装置の能力差、規模差がない時代では、製造装置を一基持てば、酸素製造コストの決定的差がないため、立地条件など他の優位があれば新規参入が可能であった。
これが、後の価格競争とそこからのカルテル化を生み出す。

第2章
過当競争とカルテル化を1930年代の大阪における企業参入と連携に見る。
また、その中で溶材商がエンドユーザーへの運搬において成長した。

第3章、第4章
戦時下において、酸素製造装置の国産化や酸素容器の国産化が急速に進んだ。また、外資系企業である帝国酸素は軍の介入により強制的に日本化が行われた。企業はカルテル組織は解体されため、軍と国の需要に頼り、一部は戦地での工場経営も行なった。

第5章、第6章
酸素を使う側の溶接・切断機との関連。
戦前のトップ酸素メーカーである2社は、同時に溶接・切断機供給を行なっていた。
また、電気溶接技術も1930年代以降、急速な成長を遂げた。

第7章
戦後、酸素製造技術が革新したことにより、製造コストに大きな差を生み、トップ2社と技術革新に成功した数社が大企業となり、他社は酸素を仕入れるという産業構造の大きな変化に繋がった。

第8章
溶接工法の変化は、アーク溶接機の普及につながり、造船業を始めとする各種産業の技術革新にも繋がった。また、溶接機も変化を遂げ、抵抗溶接機への大手メーカーの進出が本格化した。

第9章
酸素メーカーの溶材商化の一方、溶接機メーカーによる販売系列化も進んだ。

第10章、終章
1993年から業界再編が進む中で、酸素メーカーは3社に集約されていったが、寡占化によるカルテル問題も発生した。
海外企業への買収やなども積極的に勧められている。

1章と7章で、製造コストの差の有無(それを生み出す技術革新の有無)が、新規参入企業の成長を左右するという歴史を読むことができ興味深かった。
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