『世界を戦争に導くグローバリズム』(集英社新書)

『TPP亡国論』で有名な著者による、覇権国家アメリカの現状とこれからの分析と、そこから発生するこれからの世界情勢の変化の予測。
全体を通してアメリカの外交を、理想主義と現実主義のどちらを志向しているかという軸で分析していく。

中野剛志『世界を戦争に導くグローバリズム』。集英社新書。2014

第1章 「危機の二十年」再び
・2012年にアメリカの国家情報会議が公表した「グローバル・トレンド2030」では、アメリカが現在を歴史的な転換点と認識し、アメリカ一極主義による世界秩序が崩壊していることを認めた
・ポスト冷戦後、アメリカによる人道主義という価値観と経済自由主義に基づくグローバリズムは、イラク戦争の失敗とグローバル化による中国経済の台頭を生んだ
・今後の世界については、中国が世界最大の経済大国となると考えており、アメリカはこの可能性に基づき自国の外交を進めていく。そこでは多極化した構造となる
・東アジアについては、1)現状維持(アメリカ関与)、2)アジア諸国間での多極化シナリオ、3)中国が政治的な自由化を行い東アジア共同体が成立、4)中国の覇権のシナリオが想定され、いずれにせよ米中協力を最善としている

・アメリカの外交は現実主義と理想主義の2つの体系がある
 現実主義:国際関係の本質を利己的な国家間でのパワーを巡る闘争と考える。
 理想主義:経済の相互依存深化や民主政治の拡大が国際協調を産むと考える。ベンサム主義や経済自由主義との結びつきも強い。気をつけなくてはいけないのは、理想主義が実際には理想を広げるために好戦的になりがちということである。
・理想主義による国際秩序は、第一次世界大戦後の世界秩序にも見られた。この動きと破綻を示したのが、E・H・カーによる『危機の二十年』である
・アメリカの前述の認識の変化と、日本が今までの日米同盟路線の維持の考えにギャップが生じていることが、今後の日本の外交において悲劇をもたらす可能性がある

グローバリズムと戦争
第2章 アメリカ、二つの戦略構想
・アメリカの現実主義の立場からの一極主義・超地域的覇権主義への批判として、レインによる門戸開放の転換への主張がある
・アメリカには超地域的な覇権の維持の必要性がなくなり、「オフショア・バランシング」戦略を選択すべきというのがレインの論
・「オフショア・バランシング」では、アメリカ海外の紛争には軍事介入を必要最小限とし、アメリカは西半球の地域覇権の地位をとる。アジア、ヨーロッパに新たな地域覇権が起きないよう同盟国のパワーを強化し勢力均衡による秩序を求める

・理想主義によるポスト冷戦のアメリカの戦略としては、アイケンベリーの「リベラル・リヴァイアサン」が取り上げられる
・リベラルな国際秩序は覇権国家なしでも持続可能であり、アメリカはルールを再構築する上でのリーダーとしての権威を再生すべきと考える

・著者は、理想主義の論に対し、核抑止力に関係なく通常兵器による局地戦は起こりうる、民主化の過程で戦争の危険性が高まると著者は批判的にみる。根本には、グローバル化と民主主義と国民国家にはトリレンマが存すると考える
・一方、現実主義路線については、同盟国の自主防衛強化が必須だが達成されていないと著者は見る。このままでは中国を地域覇権国家とした東アジア秩序が成立するの考える

第3章 日米中の攻防
・戦後のアメリカの覇権を説明してきた覇権安定理論は、もたらされた世界秩序が国際経済のダイナミズムから国家の経済力を変え、覇権国家の地位を相対的に低下させるとしている
・アメリカは、同盟維持のためのコスト拡大、同盟参加国拡大による協調の低下、同盟国支援のための自国にメリットのない紛争参加により同盟戦略を取りづらい

・しかし、同盟戦略に替わる共存戦略はその実現が難しく、新たな覇権国家を生み出し覇権戦争へと突入する

・米中の覇権戦争に対し、アメリカは日韓との同盟戦略と、中国との共存戦略を同時に志向している
・日本は、アメリカが中国と共存しようとしている意図を理解しないと、自国の外交戦略を誤る
・尖閣諸島問題には、アメリカは関与しない方針を明確にしている

第4章 中東の動乱
・中東において、アメリカは現実主義的な理想主義の方向性を、オバマ大統領の国連総会演説にて示した
・多国間条約や国際機関による対処は、中東におけるウエストファリアン・システム回復を目指すものでもあるが、困難であると著者は現在までの中東情勢を概観した上で指摘する

第5章 ロシアの怒り
・アメリカのヨーロッパにおける失敗は、ウクライナ危機をもたらしたアメリカのNATO東方拡大戦略に発する
・ロシアは、ウクライナへ関与するアメリカの姿勢に対し反感を持ち、ウクライナ危機に際してクリミナ支配を迅速に進めた

終章 覇権戦争
・東アジアに勢力均衡が実現する可能性はほとんどない。勢力均衡実現のための価値観が、東アジアに共有されていないため
・中国はアメリカへ同盟戦略でも共存戦略でもなく、撤退戦略をとるようにメッセージを出して、アメリカの有力な選択肢でもある




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