『戦争がつくった現代の食卓』(白揚社)

アメリカ陸軍のとある研究所の研究が、いかに現在の人々の食生活に影響を与えているか。
フードライターである著者は、自分が多少なりとも健康と思っていた食生活が実はそうでもなく(子どもには何が食べさせられているかわからない給食よりお弁当!と思っていたが、お弁当に使っている加工食品を見てみたら。。。)、そこからどうやって加工食品が産まれてきたかを追う内に、アメリカ陸軍ネイティック研究所にたどり着く。
加工食品の多くは、軍の携行食の研究と民間食品大手企業の結びつきの歴史でもあった。

アナスタシア・マークス・デ・サルセド(著)、 田沢恭子(訳)『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』。白揚社。2017

フランス、ナポレオンの時代に戦闘地域の兵士の食糧として保存の効くものが求められ瓶詰めが産まれ、イギリスでは缶詰が産まれた。
そんな軍と食糧の保存方法の歴史は、アメリカでは米西戦争時の牛肉缶詰の腐敗スキャンダルで注目を浴びたように20世紀前から始まっていたが、大二次世界大戦において兵士の数が急増したのに伴い、本格的に研究されるようになった。
糧食研究所は当初3人のスタッフと750ドルの特別予算で始まり、コンバット・レーション(戦闘食糧。少し前に流行った言葉なら「ミリメシ」かな)の開発に取り組んだ。

戦中、そして戦後も続く兵士用の保存食の開発は、様々な研究を経て多くの食品加工技術を生み出した。
それらの技術は、研究に協力した民間企業により商品化され現在の日常生活に浸透している。

・戦地で兵士が食べられるチョコレートの開発のため、溶けないための加工技術研究から
①エナジーバーのようにたんぱく質・穀類・ショ糖を合体させた携行食。ここにはある程度の水分を含んだまま腐敗しないための技術も使われた
②フリーズドライ技術(食べるときに水を必要とするこの技術は戦地向けとしては成功しなかった)

・戦地へ肉を持っていきやすいように骨から外され、肉の切れ端を加工して作る加工肉の技術が発展した(骨付きだと運送効率が悪い)。刻んで-つなぎを加えてまとめて-成型して-加熱・保存処理する、という技術から、パック入りの加工肉やマックリブが産まれた

・長持ちするパンの研究から、現在私達が普通に食べているようなごく短時間の発酵、それにより失われる粘りを追加するためのグルテン多用、長期保存をさせるための酵素などが多量に入ったパン(一部研究者の言う「非老化性パン様食品」)となっている

・食品保存技術としては、食品そのものでなく、食品の包装としてサランラップの開発などプラスチック包装技術の研究や、高圧加工による殺菌技術の研究

著者は、自分や自分の子ども達が、かって兵士が食べていたものと同じものを加工食品として食べていることに、ある種の楽観視(健康的な要素の増加)と手間を省けることによるメリットを感じる。
しかし、同時に軍による食品研究の問題点も考察する。

・ハイリスク・ハイリターンな研究に対して出資できる唯一の存在である軍の研究所は、アメリカの食生活の方向性を決める
・意思決定プロセスを軍の独占状態から解放し、食品技術の変化がインパクトを与える関係者にも参加してもらうべき
・技術がもたらす長期的な影響調査が必要


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