『内側から見たテレビ』(朝日新聞出版)

ドキュメンタリー制作などテレビの現場に関わってきた著者が、テレビ番組制作の現場で何が起きているか・何が変わってきているかを踏まえながら、テレビの見方を示す。

水島宏明 『内側から見たテレビ やらせ・捏造・情報操作の構造』。朝日新聞出版。2014

テレビの製作現場に関わってきた著者が、現在テレビ番組制作で起こっている問題を考察する。
内側の事情や、制作と視聴者の乖離の理由が考察されながら、テレビの見方が語られる。

・テレビ番組を作る側に、視聴者(あるいは取材対象)へのジャーナリストとしての自覚が薄くなっている
-現場との距離が離れている、視聴率の重視

・ドキュメンタリー番組は、時代を映す鏡であり、時間をかけて本質的な問題を、製作者の問題意識や覚悟と共に伝える
-しかし、近年とくに「感動物語」というわかりやすさを求めて、現実を単純化・想定した筋書きどおりの内容にしようという番組が増えている。また、美談・プラス面だけを伝えるような内容も多い。

・テレビにだまされないためには、以下のような番組を怪しいと感じること
-主人公を美化するのみで、批判的な視点がない
-安手の再現ドラマを多用。物語(美談、苦労話)のみで、背景にある社会問題などは伝えられない
-いかにもな音楽がかかり、美辞麗句の並ぶナレーションが多用され考えさせないようにしている。また、ナレーションの言い回しが定型的、盛り上げ調
-大きく派手な字幕スーパー

・事実が映し出す深さ
-「ネットカフェ難民-漂流する貧困者たち」の出演者が握り締めていた手帳の内容、「聞こえるよ母さんの声が・・原爆の子・百合子」の主人公が母親の墓石へとったしぐさなど、製作者が思いもしなかったところに事実が映し出される

・報道が重要なことを伝えなくなった(ニュースが重要順でなくなるなど)
-視聴率重視が根本
-NHKの民放化が著しい

・ニュースの内容がおかしくなっている
-政府や企業の発表内容をそのまま原稿とする(検証などはない。ひどい場合は政権の示す「感想」だけを報道)
-記者が現場に出ない、記者の常識(比較的高い給与)のままで報道する(それ以外の視線を考えない)
-制裁感情を高め(許されない)るが、根本問題には触れない。断罪しても事実究明をしない。
-WHOの自殺報道のガイドラインを無視した自殺に関する報道しかない
-事実でなく、画のインパクトを重視する。これがやらせや捏造につながっている
-匿名だからこそ検証をきっちりしてきた報道が、匿名に対する検証をしなくなった。それどころか、取材対象者を自ら探すこともやめ、関係者に紹介してもらうことを当たり前にしている
-ニュースにおいては、限られた時間での編集が必要であり、その工程が並列であったり多くの人が関与するためミスがでやすい

・テレビが権力の監視機能を失っている
-権力がテレビ報道に対して堂々とけん制をかけ、テレビ局がそのけん制に従う
-政治報道を見極めるには
 政権に距離をおいて冷静に批判的に見ているか
 権力者が番組に出てくれただけで喜んでいないか
 テレビ局の政治部長や解説委員長がわけ知り顔にコメンテーターになっていないか(彼らも永田町ムラの住人)
 生放送でなくVTR(=編集可能)ではないか

・選挙報道の見方
-どんな争点があり、どんな問題点があり、現状の取材と問題提起があるか
-各政党が争点・問題点に対してどんな公約・方針をもつかわかりやすく示しているか
-公約の違いをどう評価し、生活にどう影響があるかを専門的に検証・解説しているか
ほとんどの選挙報道がこの観点から見ると不十分である

・ジャーナリズムが弱者いじめに走っている
-生活保護問題を正しく捉えず、バッシングにより誤った方向へ世論誘導した

テレビを見ずにテレビは終わったという言説が溢れているが、テレビのもつ影響力はやはり大きい。
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ジャンル : 本・雑誌

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