『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

日本の右傾化について、社会・政治の様々な面で考察されている一冊。


塚田 穂高 (編著)。『徹底検証 日本の右傾化』。筑摩選書。2017

以下章ごとに簡単に内容を。

第1章 罪深く恥ずかしい「サロゲート」に沈み込む前に 斎藤貴男
日本の右傾化について、アメリカへの追従の枠を超えない制約付きで、90年代の教育や社会に見られる選民主義や社会的ターウィズムから現在までが俯瞰される。

第2章 在日コリアンへのレイシズムとインターネット 高史明
加害者意識を持たない新しいレイシズムとネット(Twitterやまとめサイト)の親和性が示される。ただし、Twitterを除くSNSではレイシズムを弱める働きも見られる。

第3章 ヘイトスピーチ、極右政治家、日本会議――特報部の現場から 佐藤圭
ヘイトスピーチの社会問題化が、黙殺してきた社会やメディア、政治(自民党や維新系)の人権軽視や極右団体との繋がりと関連して分析される。

第4章 排外主義とへイトスピーチ 樋口直人
市民が排外主義を支え拡大する裾野となっているかを、活動家となった市民の意識や行動から右傾化の動きを、カウンターや選挙結果などから排外主義の歯止めになる可能性を考察する。

第5章 自民党の右傾化――その原因を分析する 中北浩爾
自民党の右傾化を、1つは民主党に敗れ野党となったために「自民党らしさ」を強調せざる得なくなったこと、もう1つは自民党内の派閥構造の変化が党内の抑止を弱めるようになったことを挙げる。

第6章 有権者の「右傾化」を検証する 竹中佳彦
どういった層が安倍政権に好感を持つかを分析する。ここでは、経済政策への評価が重視され、政治的な右傾化傾向までは断定できないとされる。

第7章 〈震災後〉の日本におけるネオナショナリズム マーク・R・マリンズ
社会的な危機とナショナリズムの高まりの関係が概観される。そして、東日本大震災後の愛国心強化と宗教的な結びつきについて検証される。

第8章 教育基本法「改定」とその後 大内裕和
教育基本法の改定に至るまでの流れが、日本会議や自民党内のハト派の弱まりなどで書かれ、第一次安倍政権下での改定が個人から国家に価値を置くものであることが示される。

第9章 国に都合のいい子、親、教師をつくる教育政策 杉原里美
国家に価値を置く教育基本法の下、具体的にどういう教育政策が進められてきたかを、道徳教育の変化や教科書検定内容の変化に見、それらの変化を作ってきた人々の繋がりを親学などとの関わりから探る。

第10章 重要条文・憲法二四条はなぜ狙われるのか 清末愛砂
憲法二十四条にみる家制度の廃止と両性の平等、個人の尊厳などの深い意味を持つ内容が、改憲勢力により狙われていることが示される。個人より家や共同体に価値を置く考えに基づき、家制度の復活を狙うものでもある。

第11章 結婚、家族をめぐる保守の動き 斉藤正美
結婚制度に対する保守の動きを、同性婚への反対や結婚の絶対視に見る。

第12章 税制で誘導される「家族の絆」 堀内京子
家族の絆の強化を税制から誘導しようという施策について、三世代同居の減税や夫婦控除の導入論議から検証する。税の公正・中立・簡素が無視され、特定の思想のための税制が議論もほとんどされずに導入される危うさがある。

第13章 「日本スゴイ」という国民の物語 早川タダノリ
中身の空疎な「日本スゴイ」テレビ番組や出版物の台頭と、それが嫌中嫌韓と結びつけられて語られている現状を示す。そこに、国民意識形成のイデオロギーが見られることが危惧される。

第14章 “歴史戦の決戦兵器"、「WGIP」論の現在 能川元一
WGIP(アメリカの占領政策により日本は戦争への罪悪感を植え付けられた)論を、日本の右傾化に関連する現象として見る。WGIPは、なぜか近年になり日本人に影響を与えており、日本人はそこから抜け出さなくてはならないという論調がここ1、2年で急拡大している状況が示される。

第15章 狙われ続ける「慰安婦報道」 北野隆一
慰安婦報道に対する保守や右派の反応を、歴史修正主義として見る。

第16章 暴走する権力と言論の自由――シリーズ「時代の正体」の現場から 田崎基
改めて政権が今何をしており、報道と国民が何を失おうとしているかが書かれる。報道の自由、知る権利、表現の自由といった民主主義を支えるものが失われつつある。

第17章 神道政治連盟の目指すものとその歴史――戦後の国体論的な神道の流れ 島薗進
神道の戦後の動きから見える皇室の尊厳護持という目標と、国体神道としての復活の模索が書かれる。

第18章 創価学会・公明党の自民党「内棲」化 藤田庄市
創価学会と公明党が、なぜ自民党に連立しているのか、あるいは自民党に利用されているかが書かれる。

第19章 統一教会=勝共連合――その右派運動の歴史と現在 鈴木エイト
保守系政治家に浸透した統一教会の、世界平和統一家庭連合と名を変え、現政権の主要メンバーと密接な関係を持ち続けている現状を追う。

第20章 幸福の科学=幸福実現党――その右傾化、保守運動との齟齬 藤倉善郎
幸福の科学と幸福実現党の右傾化が書かれる。政党団体の設立により右傾化が進んだ点が考察される。

第21章 「宗教の右傾化」はどこにあるのか――現代日本「宗教」の類型的把握から 塚田穂高
現政権と宗教界の繋がりが書かれた後、宗教と保守を考察する。

幅広く、また右傾化が進んでいる/いないにこだわらずに、何が起きているかを書こうとしている著者が多く、自分が知らない分野も含めて知ることができる。
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