『自閉症は津軽弁を話さない』(福村出版)

5月に読んだ本。
内容もさることながら、疑問に対し真摯に研究を進めていく著者の姿勢が読んでいて気持ちよい。

松本敏治 『自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く』。福村出版。2017

妻(臨床心理士、地域の乳幼児健診に長年携わる)の一言

「あのさぁ、自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ(話さないよね)」

から始まる、著者(障害児心理、特別支援教育の研究者)の研究。

それは、著者自身が当初考えていた、自閉症の患者がもつ音声的な特徴(発音、アクセント・イントネーション)による解釈では説明できないものであった。そこから始まる10年以上にわたる研究の成果がまとめられた本。

・北東北(青森県、秋田県北)自閉スペクトラム症(ASD)の話しかたについて、特別支援学校の先生へアンケート調査。
 -ASDは方言を話さないという印象を持つ結果が明確に表れ、それが青森・秋田共通の表れ方をしている
 -方言不使用の感じ方は、①音声的特長(発音、アクセント・イントネーション)だけでなく、②方言語彙の不使用(共通語語彙の使用では出なかった差が方言語彙の使用にのみ表れる)にも出ている

・全国調査(近畿、九州、四国)でも同様の特徴が見られた
 
なぜ、ASDに方言不使用がみられるのか?
・従来の仮説(音韻・プロソディ障害、パラ言語理解障害、終助詞意味理解不全、メディア影響)は、①のみしか説明できなかったり、②を部分的にしか説明できない/地域によって結果が不適という点で限界がある

・特に方言語彙不使用を考えるために、著者は方言研究者などから方言の社会的機能(帰属、連携、感情、緊張緩和)を学び、方言を使う=相手との心理的距離の近さを考え、その方言の社会的機能とASDの持つ社会性の障害(社会的機能に対する理解が苦手)から方言が使えないのではないかと考える

・ASDにおける言語上の問題は、話し手の心理状態の理解に困難があることからおきていると考えられる(意図読み、意図理解が苦手)
 -ASDの模倣は、心的状態の理解ではなく、記憶とくり返しに依存した学習が優位となる

・共通語と方言の使い分けには、意図理解や他者の感情推論、方言の社会的機能の理解が必要であるが、これはASDの人々にとって困難なことである
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