『自殺の歴史社会学: 「意志」のゆくえ』(青弓社)

2/6の週に読んだ本。

貞包 英之、元森 絵里子、 野上 元 『自殺の歴史社会学: 「意志」のゆくえ』。青弓社。2016

自殺は意志によるものなのか、それとも社会によるものなのか。

明治以降の近代日本において、自殺と意志の関係は、

個人の意志と関係ない避けがたい不幸(精神錯乱、病苦、貧困)

何らかの「動機」のある個人の「意志」によるもの(厭世自殺)

「意志」によるものではなく精神的な病や社会等から追い込まれて生じる(うつ、貧困、過労)

と移り変わっているが、「意志」による/よらないということは、ある事実に対して片面だけの真理かもしれない。

本書は、自殺と「意志」の関係を個人の感覚や主張から捉えるのではなく、その関係を実感として形成した歴史と、その実感が社会においてどのような意味・役割があるかという観点から自殺を考える。
それは、自殺予防の困難さ(死、あるいは自殺を利用しようという現代社会に流れる意図との対峙)や、生きることに向き合うという想いを秘めた試みでもある。

1章では、メディアに取り上げられることで厭世自殺が一般化され、警察や家族に利用(警察は捜査を穏便に終わらせ、家族は責任を一定程度軽くすることができる)されたことを示す。

2章では、生命保険(の支払い)が、自殺に対し意志との結びつきを弱める方向に働いたことを示す(自殺に対する保険金を当てにした行為の正当化、一般化)。

3章では、過労自殺を取り上げ、過労からのうつの発症が自殺をひき起こす、という考え方が自殺と意志の結びつきを弱める方向に働いたことを示す(自殺は個人の責任ではなく、使用者側の責任を構築する)。

4章では、いじめ自殺を取り上げ、2.3章とは逆に、自殺と意志の結びつきが残る状況もありうることを示す。ここには、司法判断の維持と、学校への責任の一元化へのためらいが見られる。

5章では、自殺の現場に立ち会う人々の中で、自殺と意志の結びつきが、それぞれの立場の人にどのように受け取られ、意味づけられていくかを考察する。
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tag : 自殺の歴史社会学: 「意志」のゆくえ

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