『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』(洋泉社)

12/11に読んだ本。
『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』
管賀江留郎。洋泉社。2016

内容の9割は戦前・戦後の2つの冤罪事件である「浜松事件」「二俣事件」に関しての詳細な記述。
この2つの冤罪事件をひき起こしたのは名捜査官として知られた紅林刑事である。しかし、彼はこれらの冤罪事件での取り調べ手法から、後に拷問王と世間から言われる。
一方、「二俣事件」で紅林刑事に反対した刑事もいた。彼の名は山崎兵八。しかし、彼は警察から追放され、世間からも苛酷な仕打ちを受けることとなる。

紅林刑事が1人この冤罪に責を負うのか。
著者の記述は、当時の日本の司法・警察をめぐる政治的な争いが、紅林刑事を(虚構の)英雄にしていったことを明らかにし、同時に彼自身が熱心な警察官であったこと、英雄となったゆえに評判を気にしなくてはいけなくなったであろうことなどを推理していく。

浜松事件・二俣事件に関わったのは、2人の刑事だけではない。
「手口法」を考案し、様々な事柄をデータベース化しながら、現在のプロファイリング手法を先駆的に生み出した吉川澄一。
法医学者でありメディアにも積極的に関わった小宮喬介や、犯罪捜査の権威古畑種基。

冤罪事件の弁護においては衆議院議長をも務めた清瀬一郎や、裁判においては司法権独立に絡んで辞職寸前まで追い詰められた最高裁判事たちが携わったという事実。

こういった様々な登場人物の、それぞれの背景を多くの資料から炙り出しながら、著者はなぜ冤罪が起きたかをさらに突き詰めていく。それが、一見内容と関係のないようにも思えるタイトルの「道徳感情」であり、アダム・スミスの「道徳感情論」をベースに、人類という生物がなぜ道徳感情を持ち、それがどのように冤罪(そのほか)を産み出すかを論じる。


面白い、というより、これはなんだ・何が書いてあるんだという感情を持ちながら読み進めてしまう本。
様々な魅力的・興味深い登場人物を登場させながら、決して個人の性格や資質といったところに原因を求めない。
個人個人が意図せず結びついている状況、その状況を生み出した政治・社会を書きながら、時代や世間に原因を求めるのではなく、さらに根幹的な部分、人間の生物としての部分にまで原因を探っていく。
ある意味「怖い」本。
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