『イギリス国民の誕生』

7/18の週に読んだ本。
『イギリス国民の誕生』
リンダ・コリー(著)、川北稔(訳)。名古屋大学出版会。2000

表紙はウィルキーにより1882年に書かれた「ワーテルローの戦いについての記事を読むチェルシーの年金生活者たち」。
著者はここに画家の考える「イギリス国民」の成立を見る(本文p.381~)。

描かれている民衆は様々。スコットランド人を示すバグパイプ、イングランド人、アイルランド人、黒人。。軍人だけでなく老若男女問わずかかれる市井の人々、そして今までのイギリスが勝利してきた戦争を暗示する看板。
そこには、対外的な脅威(主にフランス)により、戦争体制の構築・戦争体験の共有によって、「イギリス国民」が成立したという画家の想いが見て取れる。

本書では、上記のように対外的脅威がイギリスという国家を成立させてきたという考えを概ね肯定しながら、さらにそこに宗教(プロテスタンティズム)という枠組みの重要性を見る。
プロテスタンティズムという枠組みがあったからこそ、イングランド・ウェールズ・スコットランドは地域文化的な差異を乗り越えてまとまりを維持できた。

イギリス国民の形成には、1689年からのフランス(=カトリック)との戦いにおいて、ばらばらであった地域をプロテスタンティズムという枠で結びつけてきた。宗教的なまとまりは、さらにイギリス国民に選民思想的なものを植え付け、「イギリス国民」であることの誇りを高めることで、より国民形成を進めたと考えられる。

対外的な脅威、宗教以外にも経済的な成功は国民形成に貢献したと考えられるが、同時に経済的な変化が支配層の変化を生み出したこと、戦争への協力体制が中下層階級の力を強めたことも考慮する必要がある。

本書は、こういった18-19世紀のイギリスにおける国民形成がどのように進んできたかを分析する研究書である。

イギリスのEU離脱がなぜ決まったかを考える上で、本書が参考になるかと思い読んでみました。
EU(によってもたらせる政治・経済・社会的な変化)が、イギリスの対外的な脅威としてイギリス国民に意識されたのか。。。
とすると、一体どんな変化が具体的に脅威として考えられたのか。
一方で、イギリス国内でも地域によってEU離脱に温度差があることを考えると、イギリスという国の枠組みがどこまで有効なのか。
そんなことを考える際に、イギリス国民が成立した歴史的な経緯を知っておくのに参考になると思いました。
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