『脳がわかれば心がわかるか』

6/27の週に読んだ本。
『脳がわかれば心がわかるか──脳科学リテラシー養成講座』
山本貴光、吉川裕満。太田出版。2016(増補改訂版)

心脳問題-心と脳の問題をどう考えるか-を、わかりやすく「わからない問題」だということを示す本。
だからといって考えることを放棄するのではなく、むしろだからこそ直接的な利益があるかどうかは抜きにして、きちんと考えることが大切であり、そのための道しるべを示してくれるような本(巻末の心脳問題についての作品ガイドには興味深い本が多数)。

第1章 脳情報のトリック──カテゴリー・ミステイクとパラドックス
脳のしくみがわかることで「わたし」がわかる!という本の内容は大きく2つであり、それぞれジレンマをやり過ごすための方便にすぎない。

1.脳のはたらきが○○なの「だから」、あなたの行動や感情や思考は××になる
-カテゴリーミステイク(異なったカテゴリーのものを因果関係で結びつける)によるジレンマの誤った解決

2.あなたの××という行動や感情や思考は、「じつは」脳の○○という働きにすぎない
-ジレンマを隠そうとする、脳還元主義による心と脳のパラドックスにぶつかる(脳還元主義における脳の位置づけ)


第2章 心脳問題の見取図──ジレンマと四つの立場
心脳問題の回答としては以下の4つの立場に集約できる。

1.唯物論 人間=物
2.唯心論 人間=心
3.二元論 人間=物+心
4.同一論 人間=物=心


第3章 心脳問題の核心──アンチノミーと回帰する疑似問題
心脳問題は、人間はモノに還元できるかをどう考えるかを考える問題でもある。
この問題を言い換えると

正命題  世界は自然法則に還元できない。自由が存在する
反対命題 世界は自然法則に還元できる。自由は存在しない

という2つの命題のどちらが正しいかを考える問題であるが、カントはこの2命題に対して二律背反(アンチノミー。互いに矛盾しあう二つの命題がどちらも成立する)と論証した。
この立場にたって4つの立場をそれぞれ見ると、

1.唯物論 反対命題のみで全て説明できるという立場(反対命題しかない)←正命題も成り立つのでこれだけでは不十分
2.唯心論 唯物論の逆
3.二元論 アンチノミーを混ぜ合わせようとする立場だが、その排他的な部分を乗り超えられずカテゴリーミステイクになる
4.同一論 アンチノミーを受け入れるが、しかし結局何も方っていない(心と脳は同じもの。では、その同じものとは?)

と、すべて行き詰ってしまう。
こうした状態に対して、「重ね描き」という処方箋(日常の経験と科学の記述を同じものに対して重ねて考える)を提示する。

しかし、重ね描きも権利問題(原理的に考えてなにが正当か)の観点ではよいが、「事実問題」(実際なにが起こっているのか)で観るとジレンマを起こしている。

心脳問題は、解決できる問題ではなく、解消されるだけの問題でもある。


第4章 心脳問題と社会──社会と科学、そして生
現代は「脳中心主義」「脳のスペック化」の時代になっている。
こうした中で、脳科学と社会の関係は、微妙な関係になりつつある(規律型社会からコントロール型社会への移行において、脳科学が利用されうる時代)。

心脳問題は、個人の哲学(的な気分)ではなく、実は政治に繋がる問題でもあり、今既に進行している前述の世界の「ただなか」で真正面から考える問題となっている。

終章 持続と生──生成する世界へ
補章 心脳問題のその後

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

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