『臨海産業施設のリスク』(早稲田大学出版部)

7月に読んだ本。最近少し地震が多いなあと思いつつ。。

濱田政則『臨海産業施設のリスク 地震・津波・液状化・油の海上流出』。早稲田大学出版部。2017。

主要産業施設が、天災や事故で受けてきた被害を概観し、その影響や今後の被害予測、対策を検討する。

1章では臨海産業施設がどのような原因で被害を受けてきたかが概観される。

・地震の直接的な揺れが、LPG球形タンクの火災をもたらした。この要因に、施設の老朽化が抜け落ちてることに著者は危惧する
・重油タンクから油が流出する被害については、底板と側板の接合部への応力集中が原因であるが、その視点が以前はなかった
・液状化はタンクのけいしゃだけでなく、防油堤の破損(油流出を防げない)、河川や道路への被害など広範囲に渡る
・臨海産業施設の被害は、被災前の貿易量などを激減させ(神戸港)、経済的な影響も大きい
・長周期地振動による被害は、浮屋根式タンクにおいて内容物のスロッシング振動による油漏れを発生させ、火災等につながる
・津波による被害

2章では、東京湾・伊勢湾・大阪湾について被害予測を行う。

・東京湾の京葉地区は液状化被害が大きく予測される
・長周期地震動による油漏れ被害は、東南海南海地震でも大きい。

3章では臨海産業施設が被災した場合の経済損失が試算される。護岸の復旧、港湾の輸出入機能の停止などが計算される。
シミュレーションの設定によるが、例えば東京湾北部地震が発生した場合に、横浜港や川崎港も油の拡散で使えなくなる恐れがあり、一兆円超の経済損失まで考えられる。

4章では、産業施設へどういった強靱化技術が適用できるか、液状化対策などが示され、例えば東京湾では6000億で護岸の強靱化が可能と試算される。

5章では、国土強靭化基本法と、そこからの施策がどのように進められているかを概観し、事業と研究の進捗の逆転へ警鐘を鳴らしている。

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 臨海産業施設のリスク

『天災から日本史を読みなおす』(中公新書)

12/26の週に読んだ本。
磯田道史 『天災から日本史を読みなおす  先人に学ぶ防災』。中公新書(2295)。2014

地震、噴火、土砂崩れ、津波。。。
様々な天災が、どう歴史に残され、そして歴史を変えたかを文献に基づいて調べていく。

第1章で取り上げられるのは地震。天正地震が徳川家康を救い、天正地震と伏見地震が豊臣秀吉の天下を終わらせた様を書く。

第2章で取り上げられるのは噴火。宝永地震と富士山噴火の関係を、武士の日記などから見ていき、江戸を含めた被災状況を示す。また、そこから富士山噴火や南海トラフの地震についての周期性を考察する。

第3章では土砂崩れや高潮について、地方の文献などから、それぞれの地方がどのような被災状況にあい、現在想定されている被災規模と比較する。先人の知恵を今の防災に活かす方法も示される。

第4章では、津波が佐賀藩にどういう影響を与えたかなど、天災が被災地の政治や歴史にどう影響を与えたかを書く。

第5章では、著者の身内の事例をもとに津波災害の恐ろしさや教訓を説く。

第6章では、東日本大震災の被災状況から、今まで常識とされていたが実際にはそうではないことや(松が津波に弱い)、被災時の心得(直感が生存につながる、自分の命は自分で守る)が書かれる。

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 天災から日本史を読みなおす

『本気で取り組む災害食』(同時代社)

11/25に読んだ本。
『本気で取り組む災害食  個人備蓄のすすめと共助・公助のあり方』
奥田和子。同時代社。2016

2016年4月の熊本地震での飲食物の供給状況を省みながら、自助・共助・公助をどの段階でどのように活用すべきかを1章で考察。
公助が働かない震災直後数日における自助の重要性(自助・共助による公助の補完)や、公助が弱い特別に配慮が必要な人への飲食物提供についてが書かれる。

2,3,5章では災害食についてのポイント。

・災害後のステップで求められる災害食が異なることを考えての備蓄
ステップ1 震災直後(~3日目程度)
 -水や熱源がないので、米や乾燥野菜は食べられない。包装をあけてすぐ食べられるもの
 -非常用持ち出し袋の中の災害食(ビスケット、クラッカー、かゆや雑炊の缶詰、バランス系栄養食品、フルーツ缶、羊羹など
 -ステップ2までの移行期間は家にある災害食(カップめん、アルファ化米-電気が回復してれば)、レトルトや缶詰

ステップ2 やや落ち着き(約1週間後~)
 -電気が回復していれば伝記を利用した食、ただし水道は使えない可能性もある
 -無洗米、缶詰・レトルト食品

ステップ3 日常への回復時期(約1ヶ月後)
 -野菜などビタミンミネラルの補給と、多様な食品が求められる
 -乾麺、無洗米。生野菜や肉魚などが食べたくなる時期

・災害食と備蓄に求められるのは
-①好物、②ローリングストック、③災害食を食べるのに水分がどれだけ必要か知る、④1人1日3リットルの水、⑤使いきり分量、⑥野菜ジュース含め、野菜や果物の加工品の備蓄
-飲み物は水以外に普段よく飲むものを

・野菜の備蓄には
-野菜ジュース缶(ステップ1)
-野菜の缶詰やレトルト、瓶詰め(ステップ2)
-上記に加え、生野菜、乾燥野菜、冷凍野菜など(ステップ3)

・アルファ化米の戻し方
-水以外の飲料でも戻せる(お茶など)
-加工食品(と水を足し)でも戻せる
-ハイゼックス法で加熱するのが安心
 
こういった耐熱の袋にお米と水を入れて、鍋の沸騰水のなかで加熱(本書の各種実験では13分)

4章は自治体に求められる災害食の備蓄について。

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 本気で取り組む災害食

『南海トラフ地震』(岩波新書)

9/19の週に読んだ本。
『南海トラフ地震』
山岡耕春。岩波新書(1587)。2016

今後30年以内に約70%の確率で発生する、マグニチュード8~クラスが予測される南海トラフ地震。
その歴史や発生した場合の被害予測、対策をまとめた新書。

序章 巨大地震の胎動
・2011年3月の東日本大震災が巨大になったのがなぜかを、断層のずれの拡大から読む。

第1章 くり返す南海トラフ地震
・南海トラフは、東海地方から西日本太平洋側(伊豆半島~四国沖)の海底の地形につけられた名称。

・紀伊半島先端の潮岬は、南海トラフの中で特別な場所。ここでフィリピン海プレートが周囲より深い角度で沈みこんでおり、地震時にずれにくい(=この東:東海地震、東南海地震と西:南海地震、は連動しにくい。ただし、同時ではないが、時間的に近接して発生していることには注意)

・南海地震の確率は室戸岬を根拠に求められている。1707年、1854年、1946年の地震の周期と規模から計算されている

・南海トラフでの巨大地震は684年の白鳳地震に記録が始まり、887年、1096-99年、1361年、1498年、1605年、そして前述の1707年、1854年、1944-46年と周期的に発生している。本書では各地震の規模や被害なども概観。

・南海トラフ地震の兆候は、日本列島の変形(地震のエネルギーの蓄積)、スロースリップに伴う低周波地震の発生(ひずみの蓄積)などに見ることができる

第2章 最大クラスの地震とは
主に東日本大震災をひき起こした日本海溝の地震との違いとしてまとめられる

・南海トラフでは、普段の地震活動が低調なかわりに、巨大地震として100~150年周期で発生する、普段は静かでいきなり巨大地震が発生することが特徴

・南海トラフでは、陸地と震源域が近いため、津波だけでなく揺れも大きくなると予想される

・南海トラフ地震が発生した場合に、被災地域に住む人口が大きい(3500万人。東日本大震災では約1000万人)。また、経済的な影響も大きくなることが予想される。
-東北の被災地の迅速な復興は、南海トラフ地震が発生した場合に備えて、助けることができる人を増やすという意味でも重要

・南海トラフ地震が起きた時のシミュレーションは、政府や各自治体が行っている。
東京:震度5程度が予想される。長周期地震動による影響は未知数
名古屋:震度6弱~震度7が予想され、建物の倒壊が発生。インフラへの影響は1週間以上。海抜ゼロメートル地帯は浸水状態が続くことが予想される。経済的な影響も大きい。
大阪:震度6弱が予想。津波が1時間半から2時間後に到達し、各所で津波や浸水による被害が予想される。また、長周期地震動による被害も予想される

第3章 津波、連動噴火、誘発地震
・震源域近いため、津波の到達が早い(外海で数分、伊勢湾奥で1時間、大阪湾の奥で2時間という予想)

・海抜ゼロメートル地帯への地震・津波被害は過去に経験のないタイプの被害となる。浸水がすぐに始まり避難がすぐにできなくなるなど、新しいタイプの被災が予想される。

・富士山が連動して噴火するかどうかは、富士山のマグマだまりの状態が判断できないので不明。ただ、最後の噴火から長い時間が立っているのも事実。仮に噴火した場合、山体崩壊が最悪のケース

・南海トラフ地震が発生した場合に、その後に誘発される地震が考えられる。それらは、活断層による直下型地震が想定される

第4章 被害予測と震災対策
・被害想定はケースによって変わるが、県別に見た場合にそれぞれで異なる。

・インフラの復旧状態から考えて、各個人が1週間は自治気で生き延びる必要があると考える

・南海トラフ地震への対策として、耐震・地震火災・津波・事業継続などがとられており、また防災教育や防災訓練も実施されている

・地震の確実な予測は難しいし、予測だけで被害を減らすことはできない

終章 それでも日本列島に生きる

続きを読む

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 南海トラフ地震

『3D地形図で歩く 日本の活断層』(創元社)

8/29の週に読んだ本。
『3D地形図で歩く 日本の活断層』
柴山元彦。創元社。2016

活断層はという言葉は、知名度のわりに実際があまり知られていない。活断層の仕組みや特徴、生活との関わりをわかりやすく解説したいという思いから書かれたのが本書。

冒頭で活断層の定義(地面や岩の割れ目で両側にズレが生じている断層の内、260万年前~現在にくり返し活動があったか将来も活動する断層)、種類(正断層、逆断層、横ずれ断層とそれらがどういう地殻の動きで発生したか)、断層でできた地形の特徴などが書かれる。
同時に、断層によってできた地形(まっすぐな谷)が古くから街道などに使われたり、断層によって生まれる温泉など、人間の暮らしとの関わりも書かれる。

全国34箇所の活断層を選び出し、その活断層を各方角から3Dおよび平面立体図で概観し、写真で風景を見、地図とともにその活断層の成り立ちや長さや地形の特徴を数ページずつ解説する。

糸魚川-静岡構造線や中央構造線など有名なライン上の断層もあり、阪神淡路大震災で活断層の恐ろしさを示した諏訪山断層、熊本地震の日奈久断層なども紹介されている。


続きを読む

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 3D地形図で歩く 日本の活断層

『地震イツモマニュアル』(ポプラ社)

8/25の週に読んだ本。
『地震イツモマニュアル』
地震イツモプロジェクト(編)。ポプラ社。2016

阪神淡路大震災の教訓を活かすために書かれた『地震イツモノート』を、より実践的に、また日々の暮らしのなかで地震への備えを自然と作るための方法を中心に書かれた。

今後想定される南海トラフ巨大地震(避難者想定950万人)や首都直下地震(避難者想定720万人)などが最初に示される。
そこには、まず自分達が生きている場所が、地震が多く、いつ巨大地震がおきてもおかしくない国であることをちゃんと知っておこうという思いが感じられる。

続いては、地震が起きた時に想定される、様々な困難に対して、日常のなかでどのように準備していくかが具体的に書かれている。

電気ガス-災害時にブレーカーやガスメーターがどう動作するか。カセットボンベやkんろの必要目安はどの程度か

水-どの位必要か(1日1人2リットル×7日分目安)、水を節約するための工夫、運びかた、トイレをどうするか、携帯トイレの準備

キッチン-乾物、フリーズドライ、レトルト食品などの利用。水をつかわない調理(鋏やラップなどの利用)

また、非常時の連絡手段、家自体や家具の地震対策、応急措置なども書かれている。

ポイントはすべてやろうとするのではなく、できることから・やれることから。

こういった本を時々読むことも、1つのやれること、になるのかな。。

続きを読む

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 地震イツモマニュアル

『紙の建築 行動する』

7/25の週に読んだ本。
『紙の建築 行動する 建築家は社会のために何ができるか』
坂 茂。岩波書店。2016

1995年、阪神淡路大震災で建築により多くの人命が失われる様子を見た、建築家である著者。

彼は、建築家である自分が何をできるかと考えながらボランティアとしてかけつけ、鷹取教会を中心に活動する様々な人との関わりを通じながら、自らお金・人を集め、災害時に人を殺めることがない建物として「紙の」コミュニティ・ホールを建設するために努力する。

誤った報道による地域の人々や他のボランティアとの摩擦などを乗り越え、被災したベトナム人への仮設住宅「紙のログハウス」による支援なども行う(1章)。

そんな著者が紙を建築材料として扱うようになった背景や、建築家を志し修行した時代のことが書かれる2~4章をはさみ、次にルワンダでの紙のシェルターに自ら関わっていった経緯が書かれる(5章)。

続きを読む

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 紙の建築

『歴史災害を防災教育に生かす 1945三河地震』

7/25の週に読んだ本。
『歴史災害を防災教育に生かす 1945三河地震』
木村玲欧。古今書院。2013

歴史は語り継がれない(被災者の話にもあるが、体験の恐ろしさからあまり語りたくないことになってしまう場合もある)。

本書は、地域の歴史災害を掘り起こし、自分たちに起こりうる災害であることであるという「わがこと意識」を高めることが防災力を向上させると考え、1945年の三河地震を例に、高齢化した被災者へインタビューを行い災害を記録し、さらに学校教育に活かすことで地域の防災力を高めるという試みをまとめた本である。

三河地震の特徴としては、第二次世界大戦末期の日本の敗色濃厚な1945年に起きた地震であり、軍需産業の要地であったため、報道が制限され「隠された地震」として記録があまり残っていないことがある。
1ヶ月少し前におきた東南海地震の余震として考えられ、東南海地震で被災した家屋等が倒壊するという連続した地震による被害の拡大があった。

この地震における被災体験を、被災者へ、予めある程度質問をまとめ構造的に聞く事でもれがないようにしたインタビューを行い、具体的な事例としてまとめなおしたのが2章となる。
ここでは、様々な被災体験(東南海地震で傷んだ家屋にいたために家が倒壊して家族が亡くなった例や、余震の怖さ、復旧までの過程など)が書かれている。

3章では2章のインタビューを、学校教育のなかで、どう「わがこと意識」としていくかがまとめらる。

続きを読む

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 歴史災害を防災教育に生かす

『首都直下地震』

6/6の週に読んだ本。
『首都直下地震』
平田直。岩波新書。2016

首都直下地震について最新の地震学の見地からまとめられた新書。

1章 首都直下地震とは何か
・首都直下地震は、防災行政上の必要から仮定された地震。首都直下地震対策特別措置法では以下のとおり定められる。
 「東京圏及びその周辺の地域における地殻の境界又はその内部を震源とする大規模な地震」

・首都圏では、M7程度の地震が、100年に5回程度の頻度で発生している。それらの地震は海溝型地震と分類されている。

・大地震が対都市に与える影響は甚大である(リスボン地震がポルトガルの没落のきっかけの1つであった)

2章 予想される被害
・震災は、社会が地震に対して十分な「耐力」を持たないことで生じる。地震による災害を減らすには、震災の要因(建物の脆弱性など)をなくしていく以外にはない

・首都圏(東京)の地震による被害想定は、内閣府や東京都によってだされたものがある。それぞれ、検討対象となる地震をいくつか仮定し、生活のシーン(季節や時間帯など)別に被害を想定している。

・都心南部直下地震が発生した場合、広範囲で震度6強の揺れが発生し、一部では震度7が想定される。この揺れで木造住宅など多くの建物が損壊し、火災が発生すると考えられる(火災の延焼は2日程度継続)。犠牲者は最大23,000人となり、内7割が火災による犠牲者になると考えられている。
 ライフラインへの影響は、電力が1週間以上不安定となり、主要道路・一般道は数日麻痺、その後も厳しい渋滞が数週間続くと考えられる。地下鉄は1週間、JR・私鉄は1ヶ月は運行停止と考えられる。

・経済的なダメージも大きく、東京の経済的な地位は急落し、経済的な要因から被災地・被災者支援が困難になる可能性も高い

3章 震源はどこになる?
・活断層およびプレート境界の、過去発生した地震の例を挙げ、また東日本大震災による影響なども踏まえた上で、首都圏での地震発生の可能性が高いことを強調

4章 予知は可能なのか?
・著者の意見としては、現時点では首都直下地震の予知はできない

・地震予知の方法と、その研究成果や状況をいくつか紹介

終章 首都圏を守るために
・人口集中、木密地域の存在が首都圏で地震が起きた際のリスクを高めている

・住宅耐震化、地域消防組織の対応力の向上などがさらに必要となっている

・帰宅困難者への対応も重要

・自助のすすめ(最初の5分のイメージ、3分間にやるべきこと-とにかく自分の身を守る、3分過ぎたら屋内に止まるか脱出するかを判断。津波のチェック)。そのあとは共助、公助が始まる

続きを読む

テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

tag : 首都直下地震

『福島と原発3』

5/23の週に読んだ本。
『福島と原発3 原発事故関連死』
福島民報社編集局。早稲田大学出版会。2015

東京電力福島第一原発事故が、地元に何をもたらしたのか。
原発事故で死人は出なかったとされているが、果たしてそう言いきれるのか。

本書は、福島の地元紙である福島民報社が、原発事故に伴う避難の過程で死期を早めたケースを「原発事故関連死」と位置づけ、遺族などに取材をしてきた連載をまとめたもの。

第一部は原発事故関連死についての連載をまとめたもので、避難過程で心労を重ね、苦しみ、そして亡くなった方の遺族の声がまとめられている。

第二部は地震や津波で亡くなった方に関する連載、第三部は地震・津波を経て今を生きている人々を追った連載の一部がまとめられている。

続きを読む

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 福島と原発3 原発事故関連死

『生態学が語る東日本大震災』

4/18の週に読んだ本
『生態学が語る東日本大震災 自然界に何が起きたのか』
日本生態学会東北地区会(編)。文一総合出版。2016

東日本大震災の地震・津波による自然界への「撹乱」は、自然にどういった影響を与えたのか。

多くの生態学者によりまとめられた本書は、
「大きな被害を前に、生物調査を行うことは社会の要請とかけ離れているように感じた」
彼らが、調査を行う中で、人々から投げかけられた「沿岸の自然はどうなったのか」「自然は回復してきたのか」という疑問に答えるべく、研究成果をまとめた本。

干潟・岩場の生き物、砂浜や海岸などの植物、里の生き物、そして復旧事業と生態系などの研究成果がまとめられる。
その中には、海岸への油の流出の影響や東京電力福島第一原発事故の影響(獣肉の汚染)など、人間活動が原因とも言える研究も含まれる。

以前紹介した
『巨大津波は生態系をどう変えたか』
(http://honnohon.blog137.fc2.com/blog-entry-966.html)
より、広範囲、また学術的な内容であるが、こういった本があるということを忘れないようにしたい。

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 『生態学が語る東日本大震災』

『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』  01/19のツイートまとめ

honnohon

1/19に読んだ本『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』 ダイヤモンド社 https://t.co/v2XbudLZnD
01-19 19:31

東京電力福島第一原発事故。そこから何が起きるか。なぜ原発事故が起きたかを、世界経済や国際政治の文脈から読み解くための本。アメリカで行われた原爆実験と、それが近隣住民や映画のロケで訪れた著名俳優含む関係者に、どういった悲劇をもたらしたか。
01-19 19:35

あるいは、旧ソ連で発生したと思われる隠された原子力関係の事故などから、今後日本(福島第一原発周辺だけではなく、もっと広い関東東北エリア)でどういうことが発生し得るかを想定する。
01-19 19:37

また、軍事から始まった原子力利用が、どういう利権の元に、誰が推進してきたかを、国際的な財閥の暗躍などを含めて書く。日本の原子力ムラで活躍する人々が、そういった経済界などの影響をどのように受けてきたかまで書かれる。
01-19 19:39

ここに書かれていることが事実かどうか…あとがきにある「まったく信頼できない政治家と自称・専門家に惑わされることなく、自立して、己の考えを持たなければ、自分の身を守れないのだ」という文章を自分のこととして捉えるかどうか、に尽きると思う。
01-19 19:42

続きを読む

テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

tag : 東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命

『BE KOBE 震災から20年、できたこと、できなかったこと』 01/08のツイートまとめ

honnohon

1/8に読んだ本『BE KOBE 震災から20年、できたこと、できなかったこと』ポプラ社 https://t.co/beEE27o2Sp
01-08 18:06

阪神・淡路大震災から20年。神戸で生まれた、あの震災の教訓や知恵を共有し、外に向けて発信する取り組みが、タイトルの「BE KOBE」。本書は、そんな取り組みの中から生まれた。神戸という街に携わってきた13名に、それぞれの取り組みや神戸への思いを語ってもらったのがこの本。
01-08 18:11

小説家、防災学者、NPO法人マネージャー、コミュニティFMの主催者など様々な人が、それぞれの思いを語る。20年という歳月を通して培われた思いであり、震災と自分の関係であり、神戸という街に対する思いであり…静かに心に響く文に、その思いを受け止めようと自分の心も自然と静かになる。
01-08 18:16

震災の記憶が人びとから薄れ始める中で、いかに教訓を残していくか。そこに対する切実な思いを読むと、東日本大震災から数年経っただけで、元に戻りつつある自分の様々な姿にも気づく。
01-08 18:20

続きを読む

テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

tag : BE KOBE 震災から20年、できたこと、できなかったこと

『Fukushima Traces, 2011-2013』

【読んだきっかけ】
twitterで著者のつぶやきを見ていたので

『Fukushima Traces, 2011-2013』
赤城修司。オシリス。2015


【感想】
個人的に印象に残ったのは
2012年9月26日 「大事なことは細部から成っていると思う。」

あとは、著者自身の躊躇というのか、心の中を感じられるあとがき的な文章(「正しい伝達なんて存在しない」)

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : Fukushima Traces, 2011-2013

『原発避難者の声を聞く』-復興政策は誰を向いているのか

【読んだきっかけ】
オリンピックなどが社会の話題になるなかで、自主避難者への支援打ち切りはあまりニュースでも取り上げられず。。。
今も避難を続けている人たちの声を知りたく読んでみました。

『原発避難者の声を聞く 復興政策の何が問題か』
山本薫子 他(著)。岩波書店。2015

【内容】
東京電力福島第一原発事故により、強制避難地域となった福島県富岡町。
避難生活を続ける住民達への調査を続けてきた著者が、原発避難者の生の声をまとめ、復興政策の問題点を問う。

第1章 原発避難者たちはいま―広域避難・長期避難の現実
2011年3月の東京電力福島第一原発事故から4年。現在も福島県からの避難者は12万人近くおり、長期化した避難生活の中で生活への疲弊・不安に直面している。

・原発避難の経緯(屋内退避指示、避難区域指定、避難区域の再編を経て、2014年の一部地域の避難指示解除)
・原発避難者とは誰か(強制避難者と自主避難者の違い、県内か県外避難か)
・富岡町におけるタウンミーティング(地域のつながりを取り戻す、避難者同士でしか語らないクローズド会議などの取り組み)

第2章 原発避難者たちの思いと苦悩
タウンミーティングにおける避難者の生の声で、避難者の閉塞感、故郷への思い、避難者への視線の変化、将来への思い、そして復興政策への疑問が語られる。

「避難者が求めているのは「ふつうの生活」である。

 ふつうの生活というのは、ふつうにみんな家族で働いて、みんなで収入を得て・・・一般の過程がやっている生活、夫婦で働いて・・・働きたいということです」(p.48)

第3章 原発避難からの復興を問う
・政府による復興支援策とその問題(帰還前提しかない)、除染廃棄物処理の問題、健康管理の問題などを示す
・避難者の中での分断を、①放射能リスクの認知による分断、②広域避難にともなう分断、③支援や賠償による分断、に分けて説明
・避難者の困難を理解し、復興への提言として「被災者手帳」「二重住民票制度」「避難者による公論形成の場づくりと、復興政策への避難者の声の反映」をあげる

「原発避難の問題は、突きつめれば、私たち自身の問題である」(p.78)

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 原発避難者の声を聞く

『被災弱者』-取り残されるのは、弱者

【読んだきっかけ】
復興から取り残される被災者の具体的な状況が書かれていたので。

『被災弱者』
岡田広行。岩波新書。2015

【内容】
東日本大震災からの復興。
その中で復興から取り残された「被災弱者」の存在を明らかにし、具体例を記録にとどめると同時に、行政などの限界を取材したのが本書。

第1章 プレハブ仮設住宅で
気仙沼市のプレハブ仮設住宅で、自主的に被災者を支援する「ミスター仮設住宅」村上充氏。彼の活動を取材しながら、仮設住宅における支援事業の限界を探る。
行政における見守り活動は、財政的な理由やマンパワーの不足、硬直した運用などにより、即座の支援活動に結びつかないことがある。
こうした状況に対し、行政とは異なるボランティア活動のコーディネートや行政への働きかけを行うのが村上氏でもある。

本章では、こういった活動の具体例以外に、仮設住宅そのものの問題も取り上げられている(仕様、健康問題など)

第2章 みなし仮設で
仙台市若林区のみなし仮設住宅住民の交流をはかる「若松会」。
この章では、若松会の活動内容や、みなし仮設に住む人たちの生活が紹介される中で、みなし仮設住宅のもつ問題点が示される。
紹介されたみなし仮設住宅の不適切さや、従来のコミュニティと切り離され、既存のコミュニティにも入ることができない住民の苦労、将来の家賃負担にかんする危機感などが具体例により紹介される。

第3章 在宅被災者という存在
石巻市での在宅被災者の困窮など、支援対象外となった在宅被災者の実状が紹介される。
配布の困難さなどから食料が行き届かなかったり、十分なケアが受けられない在宅被災者。
石巻市では、在宅被災者支援のための行政-ボランティア一体での取り組みが、活動内容を変化させつつ行われている。

第4章 被災者とは誰なのか
1~3章で紹介された被災弱者の実像をまとめなおし、問題点として「罹災証明制度」(被災後の混乱から適切な評価がされなくてもそのままであったりした)や、「災害対策基本法」の限界(運用の硬直性など)が示される

第5章 子どもたち―学校と遊び場は取り戻せたか
子どもたちへの支援活動を紹介する中で、学校間の格差や支援内容の変化などが紹介される。

第6章 生業再建の希望と困難
生業が成立しなくなった状況と、産業再建の動きなどが紹介される。ここでは、復興がそれぞれの被災者の事情によりことなり、進みも早くないことが示される。

第7章 復興事業の不条理
行政と住民の復興事業への意識の違い(例えば高台移転に関してなど)が紹介される。

【感想】
決して復興はしていない。それも、弱者ほどあの日のまま。。。
そういう現実を様々な面から知る本です。

テーマ : 電子書籍
ジャンル : 本・雑誌

tag : 被災弱者 感想

『火山と原発』-想定外、にまたしてしまってよいのですか

【読んだきっかけ】
『死都日本』(http://honnohon.blog137.fc2.com/blog-entry-425.html)や『破局噴火』(http://honnohon.blog137.fc2.com/blog-entry-430.html)で書かれたことを、ブックレット形式でよりわかりやすく理解できそうだったので。

『火山と原発 最悪のシナリオを考える』
古儀君男。岩波ブックレット。2015

【内容】
火山活動全般(日本における火山活動や、巨大噴火の可能性)の理解とともに、もし巨大噴火が起きた時に原発がどうなるかを考察する。

第1章 火山大国、日本
・日本の活火山110という数字は世界の活火山の約7%にあたる。日本は火山が集中する火山大国である。
・噴火のいくつかのタイプはマグマの粘性や火山ガス量による。溶岩流や火砕流など。また、噴火のあとにラハール(火山泥流)と呼ばれる破壊力の強い災害も発生することがある。
・噴火の予知はすべての活火山でできるわけでない

第2章 超巨大噴火
・超巨大噴火は約1万3千年に1回。超巨大噴火と破局噴火をあわせると約7千年に1回程度発生してきた
・日本における破局噴火は7300年前の南九州が最後。この破局噴火は九州の縄文文化を壊滅させたと考えられている。世界では、ミノア文明を破滅に追い込んだ破局噴火や、人類を絶滅させかけた超巨大噴火などがある
・現在、イエローストーンはいつ超巨大噴火を起こしてもおかしくない状況にあると考えられる

第3章 川内原発と超巨大噴火―火砕流の直撃は何をもたらすか
・原発を火砕流が襲った場合、発電所の施設の破壊、電源喪失によるメルトダウンは避けられない。さらに、火砕流に襲われた場合は高温状態が長く続き、また火山灰などのため、事故後に長時間にわたり接近できず、放置状態となる恐れが非常に高い。
・九州電力や国は、超巨大噴火の可能性が小さいとしている。しかし、検討チームにおいて複数の火山学者が危険性を指摘したにもかかわらず、再稼動ありきの規制委員会の姿勢が危険性を無視した。

第4章 灰に埋もれる日本、そして原発―最悪のシナリオへ
・巨大噴火があった場合の降灰被害は、健康・建物・道路/鉄道/飛行機などの交通や運輸、電気/ガス/水道/通信
などのインフラ、農業や産業、生態系など非常に多くのことへ深刻な影響を与える
・降灰は、原発の機能にも様々な影響をもたらすことが想定される。規制委員会の審査はガイドなどに沿ったものではあるが、その火山ガイド自体の信頼性が低い(火山学会からも見直しを提言されている)ことを考えると、決して安全を保証するものではない。
・超巨大噴火の可能性がある以上、原発はすぐにでも廃炉にすべき

【感想】
読んでいて思ったのは「想定外」はもう止めて欲しいということ。
想定できないのであれば、それを無視するのではなく、危険であると判断し止める方向に行くのが規制委員会の正しい姿だと思いますが。。。

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 火山と原発 感想

『原発と大津波 警告を葬った人々』-そして、この警告も葬られるのか

【読んだきっかけ】
東京電力福島第一原発事故がなぜ起こったか。
大津波は決して想定外ではなく、想定されていたことであったことを明らかにした本と聞いて。

『原発と大津波 警告を葬った人々』
添田孝史。岩波新書。2014

【内容】
大手新聞社で科学分野を担当。2011年に退社しフリーとなった著者が、なぜ原子力発電所の安全対策において大津波への対策がとられなかったかを、様々な当事者にあたり、まとめたもの。
著者は、福島第一原発事故の国会事故調査委員会で、津波分野の調査も担当。

序章  手さぐりの建設
・福島第一原発建設時においては、プレートテクニクス理論がまだ成立途中であり、地球の大きな動きがわかっていない状態であった

・地震の「揺れ」に対しては3倍の余裕を持つように想定することが当時原子力委員会で決められていたが、3倍という数字に根拠はなく、また当時は地震の揺れの記録も少なかった。しかしながら、少なくとも不確実だから安全率を設けて設定するという対策がされた。一方、「津波」に対してはそういった配慮はまったくされなかった。津波の想定は福島第一原発から55キロ離れた小名浜の12年間分の記録しか利用されなかった。

・福島第一原発より4年送れて設計された女川原発の設計時は、東北電力OBで電力中央研究所に当時勤めていた技術研究所長の貞観津波を強く配慮すべきという主張により、津波に対して配慮された設計がされていた

・津波被害については、その後の80年代や90年代の地震で実態が把握されつつあったが、こういった知見を建設済みで設計時に配慮されていなかった施設へどう対応するべきかのバックチェックのルールや新基準に適合させるバックフィット制度がない。

第1章 利益相反―土木学会の退廃
・原発の津波想定見直し時、電力業界は膨大な対応コストをさけるため、安全率を切り下げるために積極的に動いた。その大きな一つの動きが、電事連による土木学会の利用であり、土木学会の協力的な態度であった。

第2章 連携失敗―地震本部と中央防災会議
・2002年に地震調査研究推進本部が福島沿岸の大津波を予測していたが、中央防災会議はその予測を防災計画に反映しなかった。そこにも電力業界の影響があったと考えられる。

第3章 不作為―東電動かず
・東京電力が津波対策を先送りにした経緯を追う。東京電力は、津波のリスクが高いことを知っていながら、確率などの数字をいたずらに低くし、正しいリスク評価を行わず、津波対策を行わないようにしている。

第4章 保安院―規制権限を行使せず
・原子力安全・保安院は、海外の事故例など含め、津波予測の不確実性を早くから認識していたにも関わらず、電力会社と一緒になって情報を隠し、規制する権限の行使を怠った。

第5章 能力の限界・見逃し・倫理欠如―不作為の脇役たち
・立地県である福島県や、メディア、研究者も、津波に対するリスクが高いことをある程度知りながらも、電力会社や保安院へ追求することがなかった。

終章 責任の在処
様々な調査委員会などが調査をおこなったが、責任が巧妙に回避され、「安全文化」という言葉で責任を曖昧にしてきたのが電力業界および原発に関連する様々な組織・人々である。そして、その過ちは今現在も繰り返されている。

【感想】
各章でキーとなる人物へのインタビューの状況などが記述されますが、責任回避的な回答が多く歯がゆく感じます。
また、福島第一原発所長の吉田氏の別の一面(事故前において津波リスク評価を低くするための奔走)も知ることができるのはよいと思います。

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 原発と大津波 感想

『地震との戦い なぜ橋は地震に弱かったのか』

【読んだきっかけ】
1月に入ると、阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)のことがメディアなどで取り上げられます。
あの時、愛知に居た私にとって、驚きだったのが高速道路の倒壊した写真でした。
この本が、橋がなぜ地震に弱かったのか、また現在ではどういった対策が行われているかについて書かれていたので読んでみました。

『地震との戦い なぜ橋は地震に弱かったのか』
川島一彦。鹿島出版会。2014

【内容】
土木工学の研究者である著者が、関東大震災前後に開発された耐震設計法とその限界の露呈(1964年の新潟地震を転機)、新しい耐震設計の試みについて、専門知識を交えながら解説する。

第1章 なぜ橋は倒壊したのか?
・Eディフェンス(実大の地震を模した震動破壊実験用施設)による、1995年兵庫県南部地震の橋脚倒壊メカニズムの究明実験の結果。鉄筋が容易に座屈する様子や、当時までの「主鉄筋段落し」工法の欠陥が明らかになった。

・「主鉄筋段落し」工法は、建設費の無駄遣いを防ぐために採られた方法であるが、そこには当時の研究が不十分であり(小さな模型での一方的静的な地震力による研究が精一杯であった)、またその工法の欠陥が長い間表面化しないために長年にわたって採用された(1982年の浦河沖地震の橋脚被害で初めて露呈)

第2章 安全神話の終焉と言われた一九九五年兵庫県南部地震
・兵庫県南部地震は、地震が起きないといわれていた関西での大地震であり、都市高架橋の倒壊が初めて発生した。

・兵庫県南部地震の被害状況から、橋脚での被害発生を分析(主鉄筋段落しのせん断破壊、鋼鉄橋脚の倒壊、斜橋などの落橋、金属支承の破断など)

第3章 地震の揺れはどのくらい強い?
・地震の揺れの強さは大地震の都度、より強い揺れがあることが判明している。

・強い揺れが観測される中で、構造物により揺れの強さに違いがあることがわかり、構造物が塑性域に入ってからの揺れ方と、構造物自体のねばりの重要性が認識されるようになった

第4章 耐震技術はどのように開発されてきたか?
・明治初期に様々な海外技術が導入されたが、そこには耐震技術はなく、日本が独自に開発しなくてはならない技術であった

・1916年に佐野利器により耐震設計法が考案された。これは静的横力への耐性という考え方であるが、それまでなかった耐震技術の方向性を示した画期的なものであった。

・震度法で設計したビルが、関東大震災で耐えたことが、「震度法により耐震設計すれば大地震にも耐えられる」という過信につながり、その後の耐震設計に影響を与えた

・橋についても建物と同じ耐震技術が使われた。

・震度法への過信・思考停止(震度法に従って耐震設計さえすれば大丈夫)がずっとあった

・1964年の新潟地震で、地震による落橋があり、ここから耐震技術に関する研究が進められ、1971年に耐震基準ができた。ここで初めて地盤ではなく橋の揺れへの着目が行われたことと、液状化に対して世界初の規定が行われた。

第5章 塑性変形を考えないと説明できない地震被害
・橋においては、構造部材が塑性域に入ることは、橋全体の崩壊に結びつくと考えられており、長くタブーとされていた。

・日本のように、何十年に一度大地震が起きる場合は、橋の一部が塑性域に入ることを許す必要があることがわかった。

・塑性部分を橋脚に求める必要があり、橋脚のじん性を高めるためには、帯鉄筋が重要である。

・こういった設計法の考え方の変更は、コンピュータによる動的解析が可能となったことで普及していった。しかし、現在でもその解析は、塑性域の物性や破壊特性の定式化ができていないために難しい。

第6章 地震時保有耐力法
・1990年になると、地震時保有耐力法が導入された。ここでは、連続橋を対象とした耐震解析もできる「静的フレーム法」が使われている。

・中小地震には機能保持、大地震には崩壊防止が、橋を含めた構造物についての耐震設計の基本的な考え方。

・耐震法と地震時保有耐力法で作られた橋について、それぞれ東日本大震災でどういう被害が発生したか・品カッ田を確認。

第7章 免震・制震技術
・免震設計技術と、どういった橋に使うべきかについて

第8章 海外における耐震技術

第9章 新たな脅威―津波と長周期地震動
・東日本大震災によって、あらたな2つの課題-津波と長周期地震動が突きつけられている

【感想】
技術的な話としても興味深いのですが、それ以上にやはり「耐震法」が絶対視されてきた過去が書かれてあり、参考になります。
たまたま(だけではないと思いますが)、あることが有効と認識されると、そのあることが本当か(他の場合にも有効かなど)を検証することなく、絶対視されていく。。。
こういったことが、他にもいろいろあるのではないか、と思ってしまいます。
高度成長期のインフラが更新されていく過程で、同じような話(旧来の基準で作ったから大丈夫)にならないように願います。

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 地震との戦い なぜ橋は地震に弱かったのか 感想

『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』-生々しい。だからこそ読んでおきたい

【読んだきっかけ】
著者の本を以前に読んだことがあったことと(http://honnohon.blog137.fc2.com/blog-entry-764.html)、題材自体に強く興味を持ったので。

『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』
佐々涼子。早川書房。2014

【内容】
東日本大震災で津波による被災をうけた日本製紙石巻工場。
津波による被害は、地震直後の従業員の思惑をはるかに超え、工場の全ての設備を破壊した。
そこから、わずか半年の間に1ラインを復旧させ、また1年後に最大のラインを復旧させることができたのはなぜか。

会社として、工場を見捨てないという姿勢の明確化。地域のシンボルとしての工場の位置づけ。
当初は工場の従業員にとって、ムリとしか思えなかった工場再生が、一部門一部門、一人ひとりがそれぞれ行うべきことを明確にし、きちんとやりとげ、次の工程へ渡す中で、徐々に「できる」という認識に変わっていく様子をみることができる。

同時に、この本では、石巻工場を襲った地震とその被害のすさまじさ。
日本製紙石巻工場の野球部の人々や、近隣商店街の人々と震災時・震災後の生活についても書かれる。
そこには、単に美談的に工場再生を語るのではなく、東日本大震災が人々に突きつけた容赦ない現実を見ることができる。

【感想】
なんというか、震災やその後の生活の生々しさを、これだけきっちりと書いているところに、単なる美談的な本を超えたものを感じました。
ビジネス的な視点での東北の重要性や、震災時の影響(JITが進んでいると在庫がなく他地域の生産までストップするなど)については今まで読んだことがありますが、企業・生産活動が、ビジネスという枠組みだけに止まらず、従業員や、地域・地域に住む人々と密接につながっていることを強く知ることができる本です。

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 紙つなげ!彼らが本の紙を造っている

プロフィール

ホンの本好き

Author:ホンの本好き
読んだ本からオススメの本を、半分備忘録的に記録します~

最新記事
カテゴリ
最新コメント
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる